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国土交通省「物流バリアフリー推進調査委員会報告書概要(平成14年) 調査の目的 業務用ビルや店舗等の都市内建築物においては、従来から、トラックの駐車場や荷捌きスペースの不足、トラックが直接乗り入れできない構造等のさまざまな要因によって、円滑な物流が阻害されており、また、建物内に入れないトラックの路上における荷役作業や順番待ちの駐車によって、周辺地域の交通渋滞、アイドリングによる環境悪化も問題となっている。このため平成13年7月に閣議決定された新総合物流施策大綱の中でも、街づくりにおける物流の円滑化への配慮が取組むべき施策の一つに位置付けられたところである。 本調査は、このような都市内建築物の構造等における物流円滑化への阻害要因について、実態調査を行い、その改善・解消方策をとりまとめることにより物流の効率化、都市環境の改善に資することを目的としている。 【荷捌きにおける路上駐車】 アンケート調査の結果 【荷捌きに関する障害の指摘の数】
【障害による問題点】
【阻害要因の類型化と阻害要因中項目の指摘の数】
アンケート等においても荷捌きスペースや車両の待機スペースの不足が指摘されており、 現実に都心部の建築物においてはこうしたスペースが不足し、物流作業の停滞や渋滞等周辺への影響を生じている実態が認められるところである。また、大量の物品を納入する場合は大型の車両による一括配送が効率的であり、都市部においては通常4トン車の利用が有効であるが、建築物の構造等に起因する通行障害により、2トン車等小型の車両に貨物を分散して配送しなければならず、配送車両の増加を余儀なくされているケースもある。 さらに、貨物用エレベーターの不足や納品経路の輻輳など、荷捌き動線が確保されていない建物では、納品に多くの時間を要し、その結果、建物周辺に交通渋滞を生じている事例も報告されている。 一方、これら建築物の構造等のハードに係わること以外にも、一定の時間帯に集中する時間指定納品、複雑な検品・棚入れを伴う納品等ソフトに係わる問題も報告されている。これらの問題に対する効果的な改善・解消方策について、建築物所有者、建築物利用営業者、運送事業者、荷主、行政のそれぞれの立場で取組むべき物流バリアフリー推進方策について以下の提案をすることとする。 (1) 新設建築物における物流バリアフリー 建築物の新設においては、施設設計段階から想定される時間帯別物流をもとに、 @適正な荷捌きスペースの確保、A主に必要となる車両規模に見合った車路の適正空間の確保、 B貨物専用エレベーターなど荷捌き施設の設置や荷捌き動線の確保、といった観点から検討を行う必要がある。 建築物の立地条件や事業費などの点から、必要とされる荷捌き機能が建築物内ですべて対応でいないことが想定される場合には、外部における物流センター機能および納品代行機能の活用による搬入一括化等の対応を併せて検討する必要がある。 ■荷捌きスペースの適正な面積は、その処理能力がピーク時の車両数による負荷を上回るよう設計されることが必要であり、処理能力は平均的な荷捌き処理時間と動じ作業可能な台数から算出する必要がある。。その際、1台あたりの作業空間については十分に効率的に行われるように工夫すべきであり、大規模小売店舗立地法の適用を受けた既存の類似事例等を参考にすることにより算定が可能である。また、駐車施設の附置義務条例において荷捌き施設の定めがある場合には、当該基準に適合するすることはもちろんのこと、定めがない場合においても既存事例や標準条例を参考にする等、適切な規模の算定に努める必要がある。 ■効率的な配送を可能にする車両規模の決定に当たっては、貨物量、種類、配送ルート、配送頻度、これらについての将来予測、その地域の運送事業の特性(一般的に使われている車両規模など)等を十分に調査するとともに、運送事業者との綿密な調整を行う必要がある。特に地下駐車場への進入路等建築物の構造部分については、建築後の改修は極めて困難であることから、新築設計時において十分な検討が不可欠である。 ■荷捌き動線については、貨物の搬出入経路が顧客等人の動線と交錯しないよう配慮するとともに、段差等水平移動に対する障害は、スロープ等を設けることによって極力排除する必要がある。また貨物の上下移動においては、十分な容量のエレベーターやリフト等を設置し、効率良い荷捌きを促進させる必要がある。エレベーターの仕様・台数については貨物の量、頻度、形状などをベースに類似事例等を参考にして決定することができる。スロープやエレベーター等の設置は、そのために必要となる費用に比べ、物流効率化によって得られる効果の方が極めて大きいと言える。 新設建築物については、いくつかの都市においては駐車場法に基づく荷捌き駐車施設の附置義務条例の制定において荷捌きのための駐車施設の義務付けが行われ、また、一定規模以上の商業施設については荷捌き施設の整備等ハード的対応と搬出入計画等ソフト的対応を求める大規模小売り店舗立地法による審査も行われている。今回の調査におけるヒアリングや既存調査においても、これらの法・条例による物流バリアフリー推進の効果は大きいものであることが示されており、都市の実情に応じた附置義務条例の制定促進、大規模小売り店舗立地法に基づく運用審査における荷捌き施設への配慮によりその整備促進が図られることが必要である。昨今の建築物においては、近年における都市機能の変かに伴い商業機能のみならず、業務機能、住宅機能が複合する傾向が多く認めれれるところであり、上記の制度の対象とならないこうした機能の複合化した建築物、附置義務条例が未制定の地域の建築物についてもハード・ソフトの対応の連携した施設整備が図られるよう設計にあたっては配慮する必要がある。 ■荷捌きスペースの不足が生じている場合、必要な規模に改修する必要があるが、店舗等においては売り場面積が減少する等マイナス要因が発生する場合も考えられる。このため、後述の納品時間の平準化、配送の統合、共同化、共同荷受け等のソフトに係る対応も併せて検討し、当該建築物の実情に応じた最も効果的な改善策を導入する必要がある。さらに、関係者が合同で近隣に共同荷捌き場を設置し、これを活用することも有効な対策と考えられる。 ■大型の車両による搬入を可能とする建築物の改修についても、多大な費用を要することや構造上不可能な場合もあることから、単独での対応は現実的な改善策とは考えられない。可能な限りの改修を行い、建築物性能を明示して関係物流業者に周知するとともに、荷捌きスペースの不足の場合と同様に、納品時間の平準化、配送の統合・共同化、共同荷受け等のソフトに係わる対策も併せて導入し、改善を図る必要がある。なお、物流バリアフリーの推進方策とは言いがたい面もあるが、運送事業者側で荷室高さ可変の車両を導入して対応している事例もあり、導入費用の問題はあるものの、円滑な荷役作業に効果を発揮している。 近年は駅の機能の複合化に伴い、構内に大規模店舗を設置する例が増えているが、構造的に構内に荷捌きのためスペースを確保できない場合が多く、荷捌き車両が路上で作業するケースが増えている。これは駅周辺における道路混雑の大きな要因になっているとともに、過度の横持ち作業のため運送業者の大きな負担にもなっている。施設管理者は、人流の確保と同様、施設内のスペースを有効に活用し、物流の確保にも十分留意する必要がある。 2、物流のソフトに係わる改善方策 物流のソフトに係わる施策である納品時間の見直し、配送の統合・共同化及び共同荷受けについては、貨物車台数や荷捌き時間の減少をもたらすことにより建築物側での荷捌き機能を補完する機能があることが既存調査及び今回の調査を通して確認された。これにより周辺道路での混雑緩和や環境負荷への低減が見られている。 ■納品時間の見直しは、納品車両の集中をさけるため、通常午前に集中する納品時間を平準化し、午後や夜間に納品を行うことで、共同配送による計画納品の結果として行われるケースもある。これにより、荷捌き待ちの車両が建物外で駐車する状態が改善されるとともに、車両の効率的な運用が可能になるなどの効果もある。 ■配送の統合・共同化は、個々の製造者や卸業者によって行われた配送業務を統合・共同化によって、1社あるいは数社の限定された配送業者によって行うことである。百貨店などでは、都心の店舗とは別に大規模な配送センターを設け、そこへメーカー等から納品させ、百貨店が一括して店舗に配送する方式を用いている場合が多い。また、納品代行も物流事業者が提供している統合・共同での配送サービスの一種と考えられる。納品代行事業者は複数の納入業者の商品を集荷し、店舗別フロア別に仕訳して一括納入する。検品の代行をするケースもある。 ■共同荷受けは、百貨店や大規模複合店舗等で、メーカー等から店舗へ商品を納入する物流業者の業務範囲をメーカーからの集荷から荷捌き場での荷渡しまでとし、荷捌き場から各売り場までは、百貨店などから委託を受けた一定の物流事業者が一括して配送を行う方法である。 ■その他、今回の調査で行ったドライバーへのアンケートから明らかになったいくつかの納品方法の合理化に関する項目がある。専属便と路線便の窓口分離、大口納品と小口納品の窓口分離、検品方法の簡素化、付帯業務の整理などがある。納品に関する付帯業務については、配送業務に係わる条件として、企業間の商取引で規定されている場合もある。ただ、商取引自体には合理性があっても、それが納品車両の長時間にわたる駐停車を招く等、物流バリアとなることも多く、こうした場合には、納品方法の合理化について検討する必要がある。また専属便と路線便の窓口分離、大口納品と小口納品の窓口分離等も納品の効率化に資する方法である。
百貨店の物流ソフト改善事例 3 建築物外(路上・路外)に係わる改善方策 ■ポケットローディングの設置は、道路外に一定の間隔で荷物の積み卸しのための小スペースを設け、そのネットワーク化を図り、利用に供するものである.適切な作業空間が路外に確保されることにより安全かつ円滑な集配が可能になるとともに、路上駐車による交通渋滞等の問題も改善される。ポケットローディングは個々に荷捌き施設を持てない小商店からなる商店街などで有効である。 ■貨物車専用ローディングベイの設置は、道路と歩道の境界を一部切り込んで駐車のためのベイを設置し、荷捌き車両の駐車に供するものである。これと同様なものとして、街区の路側側のゾーンを荷捌き専用として、他の車両の通行を規制するローディングゾーンがある。貨物車両の優先的な使用が認められることにより円滑な集配が可能となる。設置に要する費用が多額とならないのもメリットである。 ■貨物車専用パーキングメーターの設置は、パーキングメーターの設置によって、路側空間を一定時間に限って駐車可能とすることである。これも貨物専用ローディングベイの設置と同様の効果がある。また長時間の駐車によるスペースの専用を阻止し、回転を高める効果も期待できる。 ■共同荷捌き駐車場の設置は、複数の運送業者が利用できる荷捌き駐車場を設けることで、ポケットローディングと同様の効果がある。さらに、共同荷捌き駐車場から商店、事業所までの配送・集荷の共同化の足がかりとなることも期待される。 ■荷捌きのタイム&スペースシェアリングなど交通規制の実施は、場所ごとに、荷捌きを行うあるいは荷捌きを自粛する時間帯を区分することにより、路上駐車を管理していく方法である。時間帯に応じて効率的な荷捌き作業が可能になるとともに、一般車両の流れもスムーズになる。また、費用は最小である。 これらの建築物での改善方策は路上、路外ともに駐車スペースの確保を中心とした施策であり、街づくりの一環として、そのルールづくりと実際の整備については、主に地方自治体・公安委員会など行政側の主導的な取組みが必要である。事実、全国各地での取組まれている事例を見ると、国、地方自治体、公安委員会、関係業界などが協議・検討する場を組織し、公共が商業・運輸業界などと連携協力して取組んでいるものである。 4、施策推進のための環境整備 (1) 物流対策の重要性についての共通認識の構築 (2) 物流バリアフリー施策の取組み指針の提示 (3) 物流バリアフリー施策推進にあたっての連携強化 |
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